さしあたって

文字に起こします。

僕こそ音楽と言えなかった人間のせいいっぱい

「権力を持ってるやつと才能を持ってるやつがいる。どっちも持ってないやつは何も持ってないのと同じ!何も持ってないってのはほとんどないってことで、ほとんどないっていうのは何も持ってないよりほんのちょっと多目ってくらい。」

僕は「どっちも持ってないやつ」なのだろう。

これはミュージカル『モーツァルト!』の中でモーツァルトが自分が並みの男じゃないことをヒロインに伝えるセリフです。

 

僕は自分自身が「平凡な人間」だと自覚しています。頭が良いとはとても言えませんし、運動も良くて中の上です。でもまあそんな人間でも「何もない」わけではないので好きな事や得意なことが一つ二つあって、それを誇っていたいと考えています。例えば、歌が好きだと思ってボイトレやタップを習ったり、自分の書いた文章が褒められたことをきっかけに、憧れのライターに少しでも近づくためにブログを始めました。僕はこれらの「ほんのちょっと」を一生好きなんだと確信しています。

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公演当日は大雨暴風で最悪の天気だった。一日目は地震で公演が一時中断してたしシャイニーカラーズは何かに呪われているのだろうか?とちょっと笑っちゃった。幕張メッセにびしょびしょになりながら到着すると、カラフルな人だかりが待ち構えていた。その場の全員が携帯を弄ったり友人と会話をして開演を待っているがどこかそわそわする空気が流れている。それが心地よかった。

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 特に希望もなく就職活動をしていました。元々がしょうもない人間だからというのはそうですが、家庭内の問題や身内が亡くなったりで将来を真っすぐ見据えるには少しアレな大学四年生だったなと思います。それでも親に迷惑をかけたくなかったので内定は貰いました。条件だけで選んだのでやりがいのある仕事だとは全く思っていなかったし、心底働きたくなかったです。

そんな心持の中で出会ったのが「アイドルマスターシャイニーカラーズ」でした。きっかけはダ・ヴィンチ・恐山さんとナラハシさんのシャニマス考察配信です。作品をほとんど知らないながらもお二人の鋭い考察はゲームへの興味を抱かせてくれたし、また、シャニマスの面白さを保障してくれた様な気がします。そんなこんなで何となくシャニマスを始めた僕はあれよあれよとハマり、人生で初めて継続的にソシャゲに課金するようになりました。絶対に許しません。

お金は失いましたが間違いなく当時の僕を元気づけてくれました。

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少し前の開催だったら歓声と共に響き渡っていたであろうOvertureが流れ出し、ステージ中央がライトで照らされついに幕が開いた。最初の曲は「Ambitious Eve」だった。僕はシャニマスを始めて日は浅いが歌詞を覚えるのは得意なのだ。声に出さずとも掛け合いのパートは熟知していた。言いようのない高揚感が昇ってきた。

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シャニマスの魅力はアイドルの抱える問題や欠点とも言えないくらいの些細な穴を埋めるのではなく認めたうえで成長したり、あるいはそのままに進んでいくストーリーだと思っています。(もちろんイラストや楽曲も好き)

自分が自堕落である事を諦めていないが上手く成長できない子や、一見完璧に見えるが他人に尽くすことで自分の寂しさを埋めようとする子など個性豊かに何かを抱えるアイドルがアイドル活動を通じて成長する過程の一端を見ると心が暖かくなりました。イラストや歌詞から心情や背景を考えるのは楽しかったです。僕はかなり単純なので自分の好きなキャラクターが頑張っていると活力が湧いてくる気がするのです。だから就活も終わらせたし、元々好きだった歌や文章も好きなままでいられました。

「楽しいことは減っちゃうかもしれないけど、なくならないよ。」このメンタリティーを保つことができました。

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幕張メッセが過熱していく。次々に出てくるユニット達はそれぞれの色を出しながらそれぞれのやり方でライブを作っていく。作品とキャラクターを背負って舞台に立つ人間から放たれる光の輝度はとてつもない。コロナで延期したライブを待ち焦がれた気持ちの集大成が今行われている。

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3月に心が折れた。会社に呼ばれ配属先や待遇について聞かされたその日だった。条件だけで選んだ僕の内定先は、新卒就職アプリに書いてあった条件や面接、メールでのやりとりで確約してくれた僕の要望を配属先の都合で叶えることができませんでした。他の人にとっては大したことではないのかもしれないが、僕にとっては様々な事情や感情によって重要な事だったのです。

なんやかんや内定を辞退し、社会のレールを外れた僕を次に襲ってきたのは無気力感です。

家族からやかましいと言われるほど聴いて歌っていた音楽は聴く気にも歌う気にもなれず、ブログについても同様でした。一生好きだと確信していた「ほんのちょっと」を簡単に遠ざけてしまっている事実が何よりもショックでやるせなかったです。

 

精一杯の先へ
目一杯の未完成で
まだ上昇中の Gradation days
世界の彩りにハート開いて
透明から鮮明に
不可能から可能性に
この空をキャンバスにして
誰のでもない 瞬間を
新しく記してこう
光空記録(My shinography)

歌:シャイニーカラーズ

作詞:古屋真

作曲:ヒゲドライバー

 

それでもシャイニーカラーズに触れて感動する資格は手放せなかった。自分の「光空記録」を記しているのだと誇っていたかった。そのプライドを守り自分自身が腐らない為に自分のしたい事・出来る事を考えました。

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ライブは終盤を迎えていた。アンコールで更に会場を盛り上げ、MCで演者が一人一人自分の思いを語っている。ずっと憧れていた才能を持った人が必死に創り上げたステージで「未来を語っている。」それが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

最後の曲は「Spread the Wings!!」

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結局僕は四月から働きます。先月までは普通に新卒で働く気でいて、こんな不安の海に出るつもりじゃったし。この決断のせいで将来の安定を失ってしまったのかなと思うと不安にもなります。それでも自分の興味のあることに挑戦することを選んでしまったので、胸を張っていられるよう頑張らないとなあという何とも言えない気持ちです。でも権力も才能もない僕が持つ「ほんのちょっと」が今も好きで誇らしいという気持ちでいられていることに安心しています。

 

今日も音楽アプリを開き何気なく選曲した僕の好きなアイドルグループが歌い上げます。

「いつだって僕らは せいいっぱい僕らは 昨日よりもっと強く 光れ(今)」

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2021年3月21日

シャニマス2ndDAY2に行きました。最高でした。僕はパフォーマンスから好きになってライブに行き勝手に満足して帰宅する人間なのですが、歌や踊り以外の要素でこんなに感動するのかとビビっています。

大好きなロックバンドが「一体感至上主義はクソ」という立場を取っているので演者と客双方で盛り上げるライブが新鮮だったし、歓声はあげられずとも拍手で空気感を共有する感覚は何とも言えない気持ちよさを感じました!

1番良かったのはやっぱりノクチルの「いつだって僕らは」だったかなあ。担当アイドルが浅倉透というのもあるけれど、フルメンバーのノクチルのパフォーマンスを見るのが初めてだったので感無量です。

MC中にシャボン玉が一つだけ漂っていて光景がすごく感動的で印象に残ったのですがそんな現象をライブで引き起こす女性声優たむ...という気持ちで一杯です、キモオタク。

本当に良いライブだったなという気持ちと無事声の豚と化したなという念が思考の部屋で同居していて最高の気分です。来月の3rdが楽しみです。俺は終わり。

 

みんな、ライブは楽しいので好きなアーティストのライブは行った方がいいよ。